自己責任、モラル

野口健からのメッセージ　自己責任

　だいたい言ってることは正しいと思うんだが、

　例えば山で遭難すれば遭難救助にかかる費用は基本的に自己負担です。だから我々はいくつも保険に入っています。エベレスト遠征前は高額な保険をかけたりします。危険を承知であえてその世界に足を踏み入れるのだから当然です。今回、イラクでの5人も同じように危険を前提で出かけたはずです。自己責任とは自己負担も含まれるもの。彼らの救出にかかった費用を彼らが負担してこそ自己責任につながるんじゃないでしょうか。

というところは引っ掛かる。そもそも、山での遭難と一緒にするのは違う気もするが。
　山で遭難したときに遭難者が負担する費用というものは、基本的に民間の人たちに払うものらしい。つまり、警察や消防には払わなくてもいいということだ。まあ当然といっちゃあ当然で、警察･消防その他の公務員の給料はすでに税金から支払われているし、むしろそれ以外のところからお金が支払われていたら正しく機能しないのではないだろうか。
　そして、(ここは想像になるが)民間に支払うのはきっと家族などが依頼した場合だと思う。頼みもしないで仕事をしてお金をせびるなんてことはあまり考えられない。民間が頼みもしないで仕事をするというときはボランティアとしてだろう。それに対して感謝の気持ちで金を払おうとするのは有り得るが、そういうことはモラルの問題なのでここでは関係ない。
　実際のところ負担についてはもっと曖昧なのかもしれないが、今回については負担する必要はないだろう。帰りの飛行機代やらは別として。

　しかし、モラルが無かったことはやはり問題である。他の国からは日本人を非難する声がある。そこで書かれているような｢三人が「政府の警告を無視した」「自衛隊を危険にさらした」理由で非難され｣たというならのならおかしいと思うし、行き過ぎた罵声なんかはある。(しかもネットが酷かったことを知事にまで言われる始末。まあ、ネットがそういうものだから逆にいいのかもしれないけど。)そういった酷い罵声は、皮肉にも日本人の倫理観を国際的に貶める結果となったのかもしれない。
　しかし、多くの人が心配したというのに｢残りたい｣だの｢楽しかった｣だのが世間に公表されちゃ腹が立つのは事実。戦場でいい写真を撮って有名になったのではなく、自分のミスで人質となり他人によって助けられたことで有名になったことを忘れてはいけない。他にも家族が自衛隊を撤退させろと言った事、｢自作自演説｣が流れたことなどがそういう罵声の引き金になっていることは大いにあると思う。そういう背景を無視して海外からこういうことを言われるのは良いことではないので、ろくに考えもせず罵倒ばかりしてきた者たちも嫌だと思うならこれも自己責任で解決してもらいたい。

　今年の流行語大賞は｢自己責任｣で固いと思うが、今回の件があまりに根本的な｢自己責任｣を考えさせることだった故に、うかうかと変なことは書けないなと再確認させられた。気分によっては勢いに任せてやってしまうことなんてしょっちゅうあるんだけど。この文章もあまりちゃんと書いてないけど｢自己責任｣で保存してしまえ。