2004年06月16日

外厩制と馬主

 競馬ってのは普通のスポーツ違って色々と金がかかっている。だからそこも考えなきゃ話にならない。

敗者の作法を巡って コスモバルクのダービー

 外厩制についての内容である。今までの内厩制というものは、美浦か栗東のトレーニングセンターに所属していなければ中央競馬で走れないというものだった。しかし、実際に調教できるのはその二つでなければ無理と言うわけではなく、日本には他にもトレセンがあるし、競馬場や育成牧場でも調教は可能である。そういう場所の馬房からも中央競馬に出走できる、というのが外厩制である。
 ここで岡田氏のコラムを参照する。
 
感動への一石"外厩制"

 安くない預託料を支払うユーザー(馬主)を顧客本位に扱ってくれない、楽しみを持てないことから、馬主を辞める人が増えています。こうした常識では考えられない売り手市場をもって良しとするなら、競いあい向上をめざすべき技術と情熱は希薄になります。どんな業界においても、感動を、価値を与えない企業が消えてゆくのは、自明の理です。いまスポーツにしろ企業活動にしろ、国際的規模のなかでファンやユーザーに、価値や真の感動を与えてゆかないことには生き残れないのです。

 確かにそんな閉鎖的で競争原理のはたらかないのは悪しきことだ。中央競馬の預託料は約60万であるらしいが、一方で地方の競馬場となると15万から高くても25万ほどで済むらしい。これは月額である。外厩であれば、単純計算で年に400万も浮くのである。設備となるとやはり美浦や栗東が優れていているだろうが、中央より他の馬房に馬を預けた方が圧倒的に安く、岡田氏の言うとおり馬主も楽みやすいだろう。

 ただ、先に挙げた野元氏の言う通り、輸送の不利はあるだろう。ここで疑問なのは、何故岡田氏はコスモバルクを美浦の厩舎に預けなかったのか、ということである。バルクは地方所属ためよく分からないが、外厩制は安い金額で中央へ出走する制度だろう。しかし、総帥と言われる岡田氏が金に困っているとは思えない。バルクを美浦に預けることだってできたはずだ。それによって輸送の不利を無くすことができたはずだ。もっと安全にダービーに出走できたはずなのである。何故それをしなかったのか。
 岡田氏の狙いは外厩制の促進だろう。外厩制でも活躍できることを示せば、多くの馬主が外厩制を利用し、厩舎村での利権は崩壊するだろう。馬主にとってこんないい話はない。先の岡田氏のコラムには何度も「競争原理(市場原理)」という言葉が出てくる。彼はこれを生み出すためにコスモバルクを利用した。こう書くと岡田氏が悪者であるかのようだが、私はこの岡田氏の行動を評価している。そして、バルクはまさに外厩制の申し子であったはずなのだ。軟弱な馬では無理な仕事であるからだ。岡田氏はバルクだけを見ているだけではない。その先のことまで見ている。

 野元氏は

外きゅうとは「究極の自己責任」の世界である。

と言いながらも

外きゅうの運用を目指す主体には、相応の覚悟が求められる。外きゅうにも「監督」を置くため、免許制度を改革する意思を示すべきだ。

とも言っているが違う。「究極の自己責任」であるからこそ市場原理が生まれ、外厩制を利用するのである。位置や設備を考えて優れているのは美浦や栗東ということになる。市場原理からしてそちらの価格は比較的高く設定される。一方で北海道などの厩舎であれば輸送の不利を受け、価格も美浦や栗東などと比べ安くなるだろう。安さを選ぶか、条件を選ぶかである。バルクのような優秀な馬で、馬主も金に困っていなければ美浦にいた方が有利である。そう能力も高くなく、北海道での開催ばかりを狙うのであれば北海道にいた方が有利であるし、金もかからなくて済む。思えばこの「自己責任」なんて昔からあった話ではないだろうか。美浦にいれば関西に行くのに不利だし、栗東にいれば関東にいくのは不利である。そういう不利を覚悟しているからこそ外厩でも預けられるというのだ。

 そもそも、競馬なんていい加減にみることだってできる。ファンは勝手に賭けて勝手に外すし、馬主は勝手に外厩にして勝手にダービーを負けるのだ。言いすぎではあるが、ファンだって少しはバルクが外厩で不利を受けてるのを考慮に入れて馬券を買わなくてはならないし、馬主だってダービーに勝てなかったのは外厩だったことも考えなくてはならない。ギャンブルとしては誰が八百長をやったというわけではないのだから、90億もの馬券が外れたってそこは「自己責任」だ。
 ただ、純粋なスポーツとしてはバルクは不運だったかもしれない。しかし、岡田氏の言うことに従えば今までが駄目だったせいでバルクが犠牲になったとも思えるだろう。全ては先を考えてのことである。

 野元氏は外厩制推進の立場であるのに、バルクの影響も示さずに岡田氏の非難をしている。しかし実際のところ、ダービーに勝てなかったバルクは多くの外厩馬を生み出したのではないだろうか。これはバルクの影響ではない、と言われればそれまでだが。


 今回の話で、私はいろいろ無知であるため、そういうところにツッコミをしてくれるととても嬉しい。というか、本当は岡田総帥って金無いんだろうか。
 ちなみにネタ元はPOG blogでした。

投稿者 arikui : 2004年06月16日 04:27 | トラックバック

コメント

はじめまして。
外厩制度について一点。今回のケースバルク-岡田は調教師(田部)と馬主との関係性、権限、責任があいまいになってしまったことが問題。外厩ということで、馬主単に施設を供応してるにと止まらず、言動が調教師を兼ねている印象があった。
実際はどうか解らないし、私自身それならそれでもいいと思うが、ならば何らかの形でオフィシャルにする事は必要だと思う。

Posted by: カラスミ : 2004年12月01日 14:15

カラスミさん、はじめまして。
仰るとおり、このケースで最も問題であるのは調教師と馬主の関係ですね。その点では、野元氏のいうような免許制度の改革まではいかなくとも、明文化ぐらいはしないとまずいでしょう。
このエントリーを書いた6月ごろは、私が見る限りですが、こういった議論はあまりみられなかったように思いますし、一方で「バルクが負けたのは外厩制のせいだ」ということばかりが言われていた気がします。
そのまま語られず、、、ということであれば、また繰り返してしまいそうな問題です。そういう点を指摘して書かなかったのは、ちょっとまずかったように思います。

Posted by: arikui : 2004年12月01日 16:15

ノモケンを肴に論議とはなかなか面妖。
コメントありがとうございます。
あなたの最後の指摘が本質を見るヒントだと、思います。
>>本当は岡田総帥って金無いんだろうか。
無論そんなわけはない(笑)あなたも承知の上とは思う。
ノモケンはその違和感を敗者の作法として解いた。
ポイントは岡田氏の言行の解釈論。
以下は私の見解。
一つは、ボタンの掛け違いがあったと思う。
言っちゃ悪いが、バルクは外厩用の実験馬に等しかったはず。
安馬だし。おそらく、ダービーに堂々エントリーする程の実力は見出してなかっただろう。オーナーも計算外だったはずだ。
結果論ではなく、転廐しなかったことで、田部師、五十嵐Jは気の毒だった。
両者とも水準以上の職責を果たす存在なのは疑いない。しかし、中央のGIに挑む目算と構えが十分であったかといえば、それを望むのは余りにも酷だ。
それまでには一定のプロセスが必要だ。彼らが、場数をどれだけ踏んでダービーに臨んだのだろうか。
無情なようだが、転廐、乗り変わりはあっても彼らの何が毀損されるとは思えない。
言わば、眼科医に心臓バイパス手術を執刀させるに等しくはないだろうか?
これが、条件馬、オーブン馬と段階と場数を踏んでのダービー挑戦なら両者に任せるべきだろうと思うが、この段階では負荷ばかりが結果に影響したとされても仕方ない。
転廐することは馬主に強烈な向かい風をもたらしただろう。たかが世論、されど世論である。岡田氏はクラブ、共有の主宰。実際は馬主代理業、代行業である。世論については普通の馬主に比べ物にならないくらい敏感でならねば、成り立たない。
岡田氏の計算は敗れてなお得るものを見つけたのだろう。
外厩制の促進と言われるが、私は否定する。
市民会館から武道館の舞台に引きづり出された調教師騎手は「やはり野に置けレンゲ草」と言われただろう。つまり、地方関係者の能力的限界との誤解を生んだ。
一般的馬主の目は、さらに厳しい。転廐出来ないと捉える向きもあろう。それは、馬主と調教師との関係性のヤミの部分、馬を人質に調教師の専横を想像させる。
いずれにせよ、外厩で得るものは乏しいと考えるを得ない。
以上のことは、次のことを岡田氏がやらないとこにより証明される。
田部厩舎に高馬、期待馬は入れない。頭数も目立って増やすわけではない。
バルクには不幸だった。後の菊花賞挑戦も岡田氏の功名心がもたらしたボタンの掛け違いだろう。天皇賞ではクラシック制覇にならんから。JCの駆けっぷりから、2000で、ヤネが違うならロブロイと際どい勝負だったのではと思わせる。
私は、岡田氏が馬主として王道を忘れ、あるいは知らず、功名心に囚われているのではないかと思っている。

Posted by: カラスミ : 2004年12月01日 20:33

なるほど、バルクは外厩用の実験馬ですか。バルクにダービーに出るほどの実力を見出した岡田氏は凄いな、と思っていましたが、そういわれてみると非常に納得ができますね。まあ、馬の価格以上には期待はしていたと思いますが。

田部師、五十嵐騎手については、単なる駒として使われていたことを考えると、なかなか酷ではあったと思います。ただ、そこで文句も言えないのは、やはりプロだからなのでしょう。

そして、これらの結果が彼らの評判を貶めたのか、というとよく分からないです。私が見る限りでは、田部師や五十嵐騎手がどうというより、岡田氏の方へ批判が集中していたように思います。ただ、段階を踏まずに高みを望んだことは確かですし、中央への参戦には実力不足なるイメージも少なからず与えたのでしょう。そのイメージがどの程度定着してしまったのか、というのは今後を見ていかなければ私には分かりません。

実際、岡田氏がコラムで主張しているのは市場の開放です。そういう視点で見れば、バルクは成功だと思います。ただ、その馬をどう活かすかとなると、岡田氏のやり方に問題があったと言われても否定は出来ません。何故なら、岡田氏がやる必要はなかったのだから。つまり、「本当は岡田総帥って金無いんだろうか。」、そんなわけない、ってことですね。

Posted by: arikui : 2004年12月03日 15:06
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