久々に買い物しました。手塚治虫の｢アラバスター｣と、｢蒼天の拳｣の9巻と、シド･バレットのベスト｢Wouldn't You Miss Me?｣が半額で売ってたので買いました。全部で3000円もしなかった。
｢アラバスター｣は、やたら運動神経の良い人がオリンピックで活躍するんだけど、その後付き合った美人に結婚を申し込んだところ、実はヒーローだから付き合っていただけで結婚なんてする訳がない、とふられます。逆上したその男は、車で逃げたその女を追うんですが事故ります。その事故で人を殺してしまい、結局懲役5年をくらい牢屋行きです。そこで怪しい科学者と知り合い、出所後その科学者の開発した透明になる光線を浴び透明になろうとするんですが、痛すぎて皮膚が透明になるだけで止めてしまいます。その後、美しいものを破壊し世界を変えてやろうと色んなところに行って人を殺しまくる話です。科学者の孫の透明美人やら、不良みたいなヤツやら出てきます。
この漫画は、見た目で人を判断することについてシニカルに描いてるんでしょう。FBIの男(おなじみロック)が出てくるんですが、とてもキレイな顔をしてるのに内面的にはとても酷い人間で、鏡を見て自分の像にチンポを擦り付けるような変態だったり、外見的に人種差別したり、透明美人の亜美を強姦したりする、この漫画の主役アラバスターが嫌う典型的な人間なわけです。アラバスターはそういった見た目が美しい人を次々と殺していくんですが、最終的に改心した亜美に｢見た目の美しさしか見ていないのはあんたの方｣みたいなことを言われちゃいます。見た目の差別で苦しんでた人が実は見た目で人を差別していたという皮肉でしょうね。
考えてみれば、一番楽しいのは亜美を取り巻く争いでしょう。自分と同種の亜美を愛するアラバスターと、奇麗な心を持つ亜美に惚れて殺しをさせたくないゲンと、妹想いの兄カニ平と、ついでに変態ロックの争い。巻末に｢亜美は魔性の女｣と書いてあったけど、まあ実際そうなんだろうね。その男たちに翻弄されたのは亜美も同じなんだけど。政治に翻弄され、男たちを翻弄したクレオパトラみたいなもんか(知るか)。4人の考え方はみんな違うようで、外見でばかり判断するロック、それに力で反抗するアラバスター、差別される側は平和に暮らすために隠れて暮らすしかないと思うゲン、カニ平はどう思ってるのかは知らないけど普通に家族として亜美のことを想ってるんだろう。最後に生き残るのはカニ平だけだったりして、翻弄する割に結局死んでしまったってのも皮肉だね。
シドの｢Wouldn't You Miss Me?｣は、聴いてるとなかなか鬱になってくるね。シド･バレットのアルバムってのは良い曲と悪い曲の差が激しいとか、そうでもないとか。もし、前者ならベスト盤に価値はあるね。というか、ベスト盤も同じなんだけどね。俺の友達ではシド･バレットのことをあまり知らない人もいるから軽く解説しよう。と言っても俺も詳しくないんだけど。
シドはピンクフロイドってバンドのオリジナルメンバーで、まず(日本では何故かそんなに知名度が高くない)ピンクフロイドについて書いてみると、ピンクフロイドは前衛的な活動をしていたのにセールス的にも成功した珍しいバンドで、｢狂気｣は15年ぐらいビルボードのTOP200に居座ったというとんでもない記録(もちろんギネス)を持つ恐ろしいバンドです。
そのバンドは最初シドのワンマンバンドだったらしく、｢ピンクフロイド｣という名前の由来もシドの猫の｢ピンク｣と｢フロイド｣から来てるぐらいだったんですが、薬中でバンドの活動が出来なくなってしまい(ライブ中急に演奏をやめてどっか行ったり)、結局ラリってる間に代わりのギタリストが用意され降ろされてしまいます。ジミ･ヘンドリックスとかジャニス･ジョプリン、アルコールも入れたらジョン･ボーナムもそうなんですが、そういった人たちと同じように人生狂わされた一人でしょう。この3人とは違って今も生きてるらしいですが、音楽はやってないそうです。そういう｢これから｣というときにダメになっちゃった人ってのは、例えばジェームス･ディーンもそうですが、神格化されやすく、このシドもそのうちの一人だったりします。残された作品とフロイドの活躍、そのフロイドは常にシドを意識して曲を作っていたような面もある(少なくともロジャーはそうだったでしょう)と言う話を聞くと、やはりシドは神に見えてきます。
このベスト盤に収録されてる未発表だった曲｢Bob Dylan Blues｣は笑えるし、シドにとっての｢THE WALL｣はボブ･ディランだったのかもとか考えてしまいます。(見た目似てるしね)
