2004年01月06日

死ぬネロ

[, 映画]

さっきやってたフランダースの犬の映画をみた
何たる可哀想な話だこと、フランダースの犬って

主人公の名はネロ
ネロは不幸だ
親がいない、貧しい、といった基本的な不幸を持ち合わせた人物だ
しかし、映画では「僕はおじいさんとパトラッシュがいれば幸せ」と言っている
こういう話ではよくある台詞だ

よくよく考えてみると、幸福は何に付属するのだろうか、ということである
金か、食べ物か
フランダースの犬の舞台は資本主義的な世界だ
働いて金を稼ぎ食べていく
ネロの家は死にかけたじいさんと子供と犬という構成
資本主義社会では弱者であろう
ろくに働くこともできないのだから、金もないのだ
金がないから食べ物も少ない
それでも幸せというのなら、彼の幸せは金によるものではないのだろう

ネロは盛んに「画家になれるかなぁ」と言っている
ここで言う画家とは、絵を描いて金を稼ぐ人間のことだ
ネロにとって金は食べ物を食べたり、小屋を借りたりするだけのもので、根本的な幸せとは言えない
では何故、絵を描くことを単なる趣味ではなく、それで生活をしようとしたのか

まず、物語の舞台であるアントワープは画家であるルーベンスの町である
ネロは絵の才能があった
そしてルーベンスを尊敬し、目指していた
そういうことで、「ルーベンスのようになる」ということで画家を目指していたのだろう

そして、もう一つ
ネロはその資本主義的な社会に、自分という存在を認めて欲しかったこともあるのだろう
親友のアロアとサーカスに行ったとき、そのまま朝まで帰らないことでアロアの父親に激怒され、そのまま二人は合うことを許されなくなる
そして、ネロはアロアの父親の風車小屋が燃えたとき、その犯人に一方的にされてしまう
アロアの父親は資本主義的なものの考え方をする人間であり、貧乏は酷く不幸だ、という考えを持っている
そういうわけで、絵なんかで食べていこうとするネロを彼は認めなかった
娘がネロと結ばれたら、娘は不幸になると信じ込んでいたのだ
つまり、ネロはアロアの父親を通して、自分の才能を社会に認めさせたかったのではないだろうか
それは、資本主義的な思考が蔓延している社会でスムーズに生活をしていく為なのだろう
アロアとも好きなように合えるし、おじいさんは元気になるし、誰も絵を描くことを止めたりはしない

しかし、彼の不幸は重なっていくのである
火事の罪を着せられ、じじいが死に、小屋を追い出される
コンクールに出した自分の作品も何かの間違いで落選する
映画だと審査員側の意図的なものがあるような印象だが、本の方は審査員の見落としであり、最後は特選として選ばれるようだ
そう、実際はその後の展開はいい方向へと進んでいく予定だったのだ
映画でもルーベンスが出てきて「君の才能は素晴らしい」みたいなことをいう(死んだ後だが)
アロアの父親が財布を落とし落胆しているところへ、ネロが財布を届ける
火事の原因も実はネロではないと分かる
なんてことをしたんだ、と皆でネロを探すがどこにもいない

ここであの有名な大聖堂の大伽藍のシーンである
ネロは見たくてしょうがなかったルーベンスの絵の前で死ぬのである
もし、彼が死んでいなかったら、アロアとまた楽しく暮らせただろうし、絵も認められただろう
ネロの死という覆せない不幸で幕を下ろすのである

考えてみると、一般的にネロの生涯はずっと不幸であった
不幸のまま終わるのである
しかも、最後は明るい未来を見せておいて終わってしまうのだ
これが我々を涙で溺死させてしまう原因ではないだろうか

しかし、ネロにとってはどうだったのだろう
ルーベンスの絵が見れて、思い焦がれた母親の元へいったのだ
大好きなおじいさんのところへいったのだ
パトラッシュとは最後まで一緒にいれたのだ

結局、我々はネロのことが分からず終わってしまった
もし、ネロが正しいのなら、我々は全て狂気だろう
しかし、その狂気がなければ価値の基準もないのだ
その狂気を正しい判断として思い込まなければ、ネロのように死ぬのだろう
ずる賢くも生きていくために狂気は不可欠だ

参考にどうぞ、関連ページ(種明かしなんかもアリ)

にしても、ネロ役は美少年だった
犬はトリビアのまんま、黒い犬だった

投稿者 arikui : 2004年01月06日 04:15 | トラックバック

コメント

感動だよな~。

見てないけど。

Posted by: メロン : 2004年01月06日 09:01

多分「世界名作劇場」のほうが泣けると思う
一気に全部見ようとしたら時間かかりすぎるけど
俺が見た実写の映画だと、ストーリーが多少違うものになってるみたい
ただ、キャストとかは結構ちゃんとイメージと合わせてるみたい
雰囲気味わう分にはいい

まあ、大まかなあらすじを思い浮かべるだけで涙が止まらないことだろうよ
俺は今日見た映画じゃ泣けなかったけど

Posted by: アリクイ : 2004年01月06日 10:12
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